全ての飲食店に影響!食品衛生法改正で変わる3つのこと
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2018年6月7日、食品衛生法が改正され、食品の安全に関する法規制が大きく変わりました。
大企業や食品の輸出入を行う事業者だけではなく、中小企業や個人経営のお店や給食センター、コンビニ、スーパー、ホテル、民宿に至るまで、全ての食品製造・加工業者、飲食店、食品販売店に関係する法改正です。
なぜ、何が、どう改正されるのか?
厚生労働省の方から伺った情報を踏まえて、大きな3つの改正事項を中心に紹介します。
※2018年6月7日に改正食品衛生法が可決成立し、6月13日に公布されました。2020年6月(HACCP義務化は2021年6月)に施行されます。
改正案や新旧対照表は、厚生労働省のサイトで閲覧することができます。
参考:厚生労働省「食品衛生規制等の見直しに向けた検討状況に関する説明会(平成29年度HACCP普及推進地方連絡協議会) 開催結果」
目次
なぜ今、食品衛生法が変わる?
キーワードは【食を取り巻く環境の変化】【食中毒の防止】【「食品の安全」のグローバル化】です。
食品の輸出入が増えたり外食需要の増加など食を取り巻く環境が変化していること、ノロウイルスやO-157などによる大規模食中毒も未だ多く、2020年には東京オリンピック・パラリンピックを控えており国際基準に整合する「食品の安全」が求められていることが、食品衛生関連法の改正の理由です。
何がどう変わる?
1.HACCP(ハサップ)が義務化される
飲食店、食品製造業者など全ての食品等事業者 1でHACCP(ハサップ)導入が義務化されます。
HACCPとは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析( Hazard Analysis )し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという 重要管理点( Critical Control Point )を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法です。(厚生労働省HP)
簡単に言うと、HACCPとは食中毒や異物混入を防ぎ食品の安全を確保するための仕組み・管理手法の一つです。事業者自らが、食品製造工程で「安全確保のために守るべきルール」を決め、「ルール通りに実施」し、その一連の過程を記録して「見える化」することで、食品の安全を確保します。
現在ではアメリカ・EUなど先進国を中心に義務化されている国際標準(グローバル・スタンダード)となっているため、日本でも義務化されるのです。
個人経営の小さな飲食店でも例外なく義務化され、施行後はすべての飲食店でHACCP書類の作成・管理・保存が義務付けられることになります。
なお、製造メーカーや大企業では厳格な基準、飲食店や小規模事業者等では簡略化された基準で運用され、どの事業者でも実施可能な基準と謳われています。
2.調理器具や容器包装に関する規制が変わる
食品製造に使用する調理器具や容器包装について、法令で認められた素材以外は利用できない制度になります。
調理に使用できる器具や食品を包む容器や袋の素材には、プラスチック、紙、金属、ガラスなど様々なものがあります。中には食品に使用するのに適さない物質もあるので、使用できる素材を法令で決める必要があります。
現在の法令は、原則使用を認めた上で、例外的に使用制限する物質を定めています(ネガティブリスト方式)。危険性が指摘されても、法令を改正しない限り直ちに使用を禁止できないデメリットがあります。
原則使用を禁止した上で、例外的に使用できる物質だけを定める規制となります(ポジティブリスト方式)。アメリカやEUなど多くの国で採用されている規制方法です。
原則と例外が逆転し、安全性が保証された物質のみ使用できる規制となります。
食品容器を製造業者だけでなく、食品の仕入れや販売をする業者にも影響があります。器具や容器が法令に適合するものであることを、仕入先業者との契約などによって担保する必要があります。
3.営業許可制度が変わる
食品営業許可の制度がより分かりやすく利用しやすい形に変わる見込みです。
飲食店や食品製造業を始める場合には、施設ごとに営業許可を受けなければなりません。
現在は、「飲食店営業」や「菓子製造業」など政令で34種類の許可業種が定められ、取扱う食品や内容に合わせて必要な許可を受ける必要があります。
しかし、分類が細かく1つの施設で複数の許可を受ける必要があったり 2、逆に衛生上の配慮を要するのに許可が不要な事業があることや、営業実態に合わない 3等の問題がありました。
そこで34の許可業種を見直し、食中毒のリスクや営業の実態に合わせた許可制度になります。
さらに、リスクの低い営業については、許可より簡易な届出制度にすることが予定されています。詳細は厚生労働省令で決定されます。
その他の改正事項
その他にも、いわゆる「健康食品」による健康被害防止対策や、食品の自主回収情報に関しても改正されました。
これらは事業者からの情報収集や国民への情報提供を、より分かりやすく便利に行う仕組みを作ることを目指したものです。
まとめ
個人経営店から大企業まで、全ての食品関連業者に関係する3つの改正事項を中心に解説をしました。
いずれも現在の食を取り巻く環境に合わせて、より分かりやすく、より安全で安心な食品を提供するための改正を目指したものです。
食品関連事業者にとっては法改正に合わせて変更を余儀なくされる点も出てくると思われますが、逆に自社の経営の仕組みを改善できるチャンスであるとも言えます。
当事務所では食品衛生法の専門家である行政書士が、HACCPシステム導入や契約書の見直しのサポートを取り扱っております。今からでも改正後に向けて準備できることがありますので、法改正や他店に先んじて対応したいという方はお早めにご相談ください。
【松葉会計事務所・松葉行政書士事務所】
担当行政書士:松葉 紀人(まつば のりひと)
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参考文献など
○食品衛生管理の国際標準化に関する検討会(特に、最終とりまとめ資料)