飲食店開業に必要な許可、資格とは?
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レストラン・喫茶店などの飲食店やパン屋・ケーキ屋を開いたり、イベントの屋台で食べ物を提供する店を開く場合、都道府県知事の許可をもらう必要があります 1。不特定多数の人に食べ物を提供する場所なので、専門知識を持った人がいる衛生的な施設でなければ、大規模な食中毒など発生する危険があるからです。ですから開店前に審査して、きちんとした施設だけが営業できるようにしているのです。
主に飲食店営業を想定して、許可の内容と、必要な条件や資格について解説していきます。
目次
飲食業許可とは?
どんなときに必要?
飲食物の製造・加工・提供などを「業として」行うときに飲食業許可が必要となります。
具体的には、飲食店やパン屋・総菜屋など食品製造・販売の店を開く場合、何度もイベント会場で屋台を開く場合など、食品を提供する事業を繰り返し行うときが該当します。
友人が集まるパーティーで料理を提供するときや、小中学校のバザーで軽食を販売するだけであれば、繰り返し行われる事業ではないため許可は不要と考えられます。
ただし、イベントで食品を扱う場合には、規模や来場者の範囲・対象、他の事業のおまけで行われるものか否か 2によって、許可や届出が必要になることがあります。判断に迷ったら保健所に問い合わせてみましょう。
参考:岡山県:食品を取り扱う催事等の届出(ページ下部の「催事等における食品の取扱いに関する指導について.pdf」)
許可の種類は?
「飲食業許可」と一口に言っても、中身は多くの種類に分かれています(下表を参照)。扱う食品や加工・販売など業種によって必要な設備や専門知識が異なるので、許可の内容も異なるのです。
例えば「カレー屋だけど、カレーパンのテイクアウト販売も始めよう」と思ったら、「飲食店営業許可」のほかに「菓子(パン)製造許可」が要ることがあります。
取扱う営業の種類に合わせて、対応する許可を取る必要があるのです。また条例で自治体ごとに独自の種類分けや追加をしているところもあります。どの許可を取るべきかは、自分で勝手に判断せず保健所に相談して確認しましょう。
1 飲食店営業 18 食品の放射線照射業 2 喫茶店営業 19 清涼飲料水製造業 3 菓子製造業 20 乳酸菌飲料製造業 4 あん類製造業 21 氷雪製造業 5 アイスクリーム類製造業 22 氷雪販売業 6 乳処理業 23 食用油脂製造業 7 特別牛乳搾取処理業 24 マーガリン又はショートニング製造業 8 乳製品製造業 25 みそ製造業 9 集乳業 26 醤油製造業 10 乳類販売業 27 ソース類製造業 11 食肉処理業 28 酒類製造業 12 食肉販売業 29 豆腐製造業 13 食肉製品製造業 30 納豆製造業 14 魚介類販売業 31 めん類製造業 15 魚介類せり売営業 32 そうざい製造業 16 魚肉ねり製品製造業 33 かん詰又はびん詰食品製造業 17 食品の冷凍又は冷蔵業 34 添加物製造業
許可の要件は?
飲食業の許可は法令の定める基準を満たせば必ずもらえます 3。
では、飲食店営業の許可を取るためには、どんな要件を満たす必要があるのでしょうか?
施設が基準を満たすこと
まず飲食店施設の構造・設備(店舗や屋台)が、条例で定める食品衛生基準を満たしていることが必要です 4。
基準は条例で決まっているので都道府県や市区町村ごとに異なります。おおよそ全国共通の基準はありますが、細かい点で違うことがありますから保健所で確認することが必要になります。
特に内装工事前に確認すべき点としては、部屋の区割りや床・内壁の素材、照明・換気設備、シンクや手洗い設備の数と場所、トイレの場所などが挙げられます。
他の器具・備品は工事完了後に用意しても間に合いますが、これらは工事のやり直しを要することもあるからです。
食品衛生責任者がいること
次に、施設には「食品衛生責任者」の資格を持つ人を1名以上置く必要があります 5。
「食品衛生責任者」は栄養士や調理師など一定の資格を持つ人がなれます 6が、それらの資格を持っていない人でも食品衛生責任者養成講習を受ければ1日でなることができます 7。
講習は都道府県の食品衛生協会が行っており、1日6時間あります。最後に小テストがありますがきちんと講義を聞いていれば問題ありません。また講習内容は全国共通で、どの都道府県で講習を受けても構いません。早く取りたいのに申込者が一杯で受講できないときには隣の県で受講する方もいるそうです。
講習の受講料、日程や申込み方法(事前の予約が必要か)は都道府県によって異なりますので「○○県 食品衛生 講習」などで検索してみてください 8。
なお、本記事では主に飲食店を想定していますが、乳製品や食品添加物、食肉製品など特定の食品を製造する施設では「食品衛生責任者」ではなく「食品衛生管理者」の設置義務があります。改めて別記事で解説します。
2年以内に罰則や許可取消を受けていないこと
過去2年以内に食品衛生法違反で処罰された人や、飲食業の営業許可を取り消された人は許可をもらうことができません。会社であれば、役員にそれらの条件を満たす人がいる場合には許可をもらえません(従業員であれば大丈夫です) 9。
過去に処罰や取消処分を受けた人であっても2年を経過していれば問題ありません。
水質検査をしていること(貯水槽・井戸水を使用する場合のみ)
水道水ではなくビルの貯水槽の水や井戸水を使用する場合には、水質検査をして飲用水として使用できるものであることが必要です 10。
許可申請時には1年以内に行った「水質検査成績書」を提出する必要があります。貯水槽などの所有者は1年に1回以上水質検査する義務がある 11ので、ビルの区画を借りて店舗を開く場合には管理会社や所有者に確認してみましょう。
なお、許可申請後も毎年1回以上水質検査を行い、その成績書を保管しておく義務があります。
許可の手続は?
許可申請手続の流れはこちらの記事で解説しています。
その他の許可や届出について
店舗の規模や営業形態によっては、飲食業許可のほかにも消防署や警察署への許可申請や届出が必要となることもあります。
収容人数30人以上の施設では、消防署長に対して「防火対象物使用届」「防火管理者選任届」の届出をします。また30人未満でも延べ面積150平方メートル以上の飲食店では「防火対象物使用届」の届出をしなければなりません。この「収容人数」にはお客さんだけでなく従業員も人数に含まれるので「うちは客席が29席だから大丈夫」と思っていると法律違反になってしまいます。
他にも、深夜0時以降にお酒を出す居酒屋にしたり、店内の照明をあえて暗くしてシックな雰囲気を醸し出すバーにするときは、風俗営業法に基づく届出や許可を要します。これは保健所ではなく警察が手続を担当します。
お店のオープン直前になって許可や届出忘れに気づくと、オープン延期や工事のやり直しが必要になることもあります。
事業計画を立てたら、早めに各部署に問い合わせるか、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
【 脚 注 】
- 食品衛生法(以下「法」と省略します)52条1項。 ⮥
- 町内会の住民のみのイベントや、住宅展示場で見学者にアイスクリームが提供される場合には、社会性や業務性がなく「業として」行うものではないと判断されることがあります。ただし、個々の事情を総合的に判断するので絶対ではありません。 ⮥
- 法52条2項「…都道府県知事は、その営業の施設が前条の規定による基準に合うと認めるときは、許可をしなければならない。」 ⮥
- 法51条、食品衛生法施行令35条。 ⮥
- 法50条2項を受けて、条例に食品衛生責任者の設置義務の規定があります。例えば岡山県であれば食品衛生条例2条および別表第2第3項にあります。 ⮥
- ほかに製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、船舶料理士や所定の学部を卒業した者も講習なしで「食品衛生責任者」になれます。 ⮥
- 岡山県の条例では資格者以外は初任時に講習させることが義務となっています。 ⮥
- 参考として、岡山県では平成29年度は毎月1~2回開催が予定されており、事前申込は不要。名札(店舗への掲示義務あり)の代金も含めて受講料は8000円です。 ⮥
- 法52条2項但書。条文では「許可を与えないことができる」という規定ですが、許可を与えない取扱いをしていると思ってください。 ⮥
- 食品衛生法50条2項の規定を受けて、条例に規定があります。 ⮥
- 水道法34条の2第2項、水道法施行規則56条 ⮥