建設業許可を取るまでの6つのプロセス
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「建設業の許可を取って仕事を増やしたい」「取引先から建設業許可を取るように言われた」「公共工事に参加したい」等々、新しく建設業許可を取ることを考えた場合、まず何を行い、どうやって許可を取得すればいいのでしょうか。
建設業許可の取り方について、手続の流れを6つのプロセスに分けて、簡単に解説します。
目次
許可を取るまでの6つのプロセス
1.許可が必要か確認する
建設業許可がなくても建設工事を受注して工事を行うことは可能です。では、わざわざ許可を取るメリットはどこにあるのでしょうか?
受注できる工事の範囲が増える
建設業許可がなくとも、請負代金が1件あたり税込500万円未満(建築一式工事は税込1500万円未満又は延べ面積150平方メートルに満たない木造住宅工事)の「軽微な建設工事」であれば請負うことはできます。
しかし、それ以上の金額の工事は、元請・下請問わず許可業者でなければ受注して工事をすることはできません 1。
建設業許可があれば、受注できる工事の範囲が広がるのです。
業務確保・融資のチャンスが増える
建設業許可を持っている業者は、行政庁の審査を経て様々な法定の義務を負っているので、社会的な信頼・評価が上がります。
一般の人でも同業者でも許可業者に依頼したいという人はいますから、請負金額の多寡に関わらず取引先や業務確保の機会が増えることが考えられます。また銀行や信用金庫などの融資審査にあたっても有利に働くことがあります。
公共工事の入札に参加するために必要
国や都道府県、市町村が発注する公共工事の入札に参加するためには「経営事項審査」を受けなければなりません。「経営事項審査」を受けるためには建設業許可が必要なので、入札の対象となる公共工事を受注するためには建設業許可が必要なのです。
メリットとデメリット
建設業許可取得のデメリットを挙げるとすれば、許可取得に時間とお金(最低でも申請手数料9万円)がかかること、許可取得後も事業年度ごとに決算報告をしなければならないこと、技術者の雇用や帳簿や契約書の保存など一定の要件を維持する義務がある等があります。
建設業許可の取得を考える上では、まずこれらのメリットとデメリットを比較して許可を取る必要があるのか検討します。
2.どの許可を取るべきか確認する
どの許可業種(29業種)を選ぶか
建設業の許可は業種ごとに分かれており、全部で29業種あります 2(令和4年7月現在)。
受注したい工事に合わせて必要な業種の許可を取ります。業種を間違えると、せっかく許可を取ったのに工事を受注できない事態に陥ります。例えば「一式工事」は「総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事」なので、「建築一式工事(建築工事業)の許可を取っても、建築系の各専門工事( 500万円以上) の施工に当たっては、各専門工事の許可が必要」となります 3。
要件を満たせば複数の「業種」の許可を取ることも可能で、同時に申請するなら申請手数料も変わりません 4。ただし、転退職などで許可業種の専任技術者がいなくなる場合には、新たな雇用や変更の届出、廃業手続をする必要があります。許可は取れるだけ取ればいいというものではない点にご注意ください。
許可の種類:知事許可か大臣許可か
建設業の許可は、都道府県知事が許可するもの(知事許可)と、国土交通大臣が許可するもの(大臣許可)があります。本店・支店などの営業所がすべて同じ都道府県内にあれば知事許可、複数の都道府県にある場合は大臣許可を取得します 5。基本的な許可の要件はどちらも同じです 6。
許可の区分:一般か特定か
さらに、許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」があります 7。発注者から工事を直接請け負った業者が下請に出すとき、下請代金の総額が4000万円以上(建築一式工事は6000万円以上)になる場合には「特定建設業許可」が必要となります 8。
下請業者が二次下請・三次下請する場合や、下請に出しても総額4000万円未満であれば「特定建設業許可」ではなく「一般建設業許可」があれば足ります。
「一般建設業許可」よりも「特定建設業許可」の方が許可取得に必要な資格や要件が厳しく、区分変更の際には申請が必要になるので、問題なければ「一般建設業許可」を選択するのがいいと思います。
取るべき許可を選択する
上記の許可業種・種類・区分に応じて、取るべき許可を選択します。
例えば「本店で建築一式工事の特定許可、本支店では大工工事と屋根工事の一般許可」とすることも可能です。企業の実態や将来の展望に合わせて申請するものを検討します。
3.許可の要件を満たすか確認する
取るべき許可を選択したら、許可の要件 9を満たすか確認します。
以下では、「一般建設業許可」の要件を簡単に説明します(特定建設業は要件が一部異なります)。
①経営業務の管理責任者がいる(法7条1号)
一定年数以上の建設業の経営経験のある人物が必要です。法人であれば常勤の役員のうち1人、個人事業主なら事業主自身又は支配人のうち1人が経営経験者でなければなりません。
代表的なケースでは、建設業に関して5年以上の経営経験がある者が要件を満たします 10。
②適切な社会保険に加入している(法7条1号)
全ての事業所において、健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に関して適切な届出が行われていることが必要です。
社会保険の適用が除外される事業者は、加入していなくても要件を満たします 11。
③営業所ごとに専任技術者がいる(法7条2号)
1つの営業所につき1人以上、専任の技術者がいることが必要です。専任技術者は、営業所に常勤して専ら契約締結などの職務に関し技術的な指導をする者です。原則として工事現場に出ずに営業所で働くことが想定されています 12。一定の資格又は工事現場での実務経験者がなることができます。
勤務する営業所が同じであれば、「経営業務の管理責任者」と同じ人でも大丈夫です。
④誠実性がある(法7条3号)
法人役員や代表者、支配人が請負契約に関して「不正」又は「不誠実」な行為をするおそれが明らかな者でないことを要します。
「不正な行為」とは、詐欺、脅迫、横領など法律に違反する行為のこと、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為をいいます 13。
過去5年以内に建築士法や宅建業法に違反し処分を受けた者などは、原則として誠実性がない者として取り扱われます。
⑤財産的要件(法7条4号)
請負契約の履行に足りる財産的基礎か金銭的信用があることが必要です。工事の途中で倒産して責任を果たせないような企業に許可を与えるわけにはいかないからです。
倒産することが明白である場合を除いて、500万円以上の資金を調達できる能力があるか、自己資本が500万円以上あれば要件を満たすものとして取り扱われます。前者は金融機関の残高証明書や融資証明書など、後者は最新の財務諸表で確認が行われます。
⑥欠格要件に該当しない(法8条)
役員・事業主・支配人の中に、虚偽の申請をした者や、心身の故障で業務遂行ができない者、過去5年以内に建設業法違反で許可を取り消された者など欠格要件に該当する者がいないことが要件です。従業員の中にいるだけなら関係はありません。
4.許可の申請をする
許可の要件を満たすことが確認できたならば、いよいよ許可申請の手続を行います。
必要書類を集める
許可申請を行うためには「申請書」だけでなく、許可要件を満たすことを証明する書類を準備しなければなりません。
一例を挙げると、過去数年分の工事契約書や、役員の身分証明書・社会保険の通知書、登記簿や納税証明書などがあります。
許可申請先(国や都道府県)によって必要書類は異なるので、必ず各申請先に問い合わせたり、ホームページや手引きなどで確認します。
申請書を作成、提出する
必要な書類を集めたら、それらをもとに「許可申請書」を作成します。
許可申請書の用紙は、各都道府県のホームページでダウンロードしたり、建設業協会などで購入することができます。
申請書類を作成したら、一緒に提出する必要書類とまとめて提出することで、許可申請を行います。
このときに申請手数料も納めますが、収入印紙や都道府県の収入証紙で納付します。納付方法のほか、申請書の様式や書き方、提出方法は申請先によって異なるので、事前に問い合わせたり手引きで確認することが必要です。
5.審査を受ける
許可申請が受理されると、行政庁による許可申請の審査が行われます。都道府県ごとに審査方式は異なるようです。
岡山県では、提出書類の内容を審査する「書面審査」と、職員が営業所を訪問して行う「現地審査」があります。抜打ちではなく事前連絡があり、営業所の実態や書類の原本確認が行われます。また、審査を進めていくうえで追加書類の提出を求められることもあります。
審査期間はおおむね2か月前後です。繁忙期であったり、不備や修正があればさらに時間がかかることもあるので、余裕をもって申請しておきましょう。
6.許可をもらう
審査の結果、要件の充足が確認できれば許可をもらうことができます。許可を受けることができると許可通知書と申請書副本(控え)をもらえます。
いずれも入札参加手続や決算報告、更新手続など将来の手続で必要になりますので、大切に保管しておいてください。
申請手続の代行について
以上の手続は自分でやることも可能ですが、第三者が業務として行うことは行政書士にのみ認められています 14。面倒な書類収集や申請書の作成、役所とのやり取りなどを行政書士に任せることが可能です。
書類は多数にわたり、直接申請者とやり取りをする必要もあるので、行政書士への委任を考えている方は、お近くの行政書士にご相談されることをおすすめします。
当事務所でも、主に岡山県内の業者様にかかる建設業許可申請代行を受け付けております。お気軽にご相談ください。
業務内容・報酬のご案内はこちら→建設業許可の代行
【 脚 注 】
- 建設業法(以下「法」と言います)3条、建設業法施行令(以下「令」と言います)1条の2。 ⮥
- 法2条1項、別表第一。 ⮥
- 岡山県土木部監理課「建設業許可の手引<令和4年6月6日改訂>」 ⮥
- 複数の「区分」の許可を取る場合、例えば「一般」と「特定」許可の両方を取る場合はそれぞれ申請手数料が必要となります。 ⮥
- 法3条1項。 ⮥
- 地域によって要件の審査方法が異なることはあるようです。 ⮥
- 一般建設業許可は法5条以下、特定建設業許可は法15条以下。 ⮥
- 法3条1項2号、16条、令2条。 ⮥
- 法7条、8条に許可の基準が定められています。 ⮥
- その他に、建設業に関する経営補佐経験が6年以上ある者や、建設業以外の経営経験者&補佐という組織形態で要件を満たせる場合もあります ⮥
- 例えば、建設国保に加入している事業者(健康保険の適用除外)、役員のみで従業員がいなかったりする事業者(雇用保険の適用除外)などが該当します。 ⮥
- 例外的に、場所的近接性や常時連絡体制の整備などを条件に現場に出られるケースもあります。 ⮥
- 「建設業許可事務ガイドラインについて」(平成13年4月3日国総建第97号) ⮥
- 行政書士法1条の2第1項「行政書士は、…官公署に提出する書類…を作成することを業とする」。無資格の第三者が報酬を得て代理申請を行うことは行政書士法違反となり、行政書士法19条1項、21条2号により「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されます。 ⮥