附帯工事とは?3つの要件と具体例を解説!
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建設業の許可は29種類の業種ごとに行われるので、軽微な建設工事を除いて、許可を受けた建設業以外の建設工事については、注文を受けて請負契約を結ぶことができません。
しかし、現実には一つの建築物や工作物を造るのに複数の業種の工事が必要となることがほとんどです。
建設業者が許可を受けた業種の受注しかできないのであれば、注文者は工事の種類ごとに業者を選んで発注しなければならず、発注者・受注者いずれにとっても不便です 1。
そこで法律は、許可を受けた業種の工事に附帯する【附帯工事(ふたいこうじ)】であれば、許可がなくても受注・施工できることとしています 2。
建設業法第4条
- 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。
附帯工事であれば許可を受けていない建設業者でも受注できますが、附帯工事に該当しなければ請負契約を結ぶことすらできません 3。
したがって、附帯工事に該当するかどうかは重要な問題です 4。
附帯工事とは何か、その判断基準を具体例を挙げながら解説します。
目次
附帯工事とは?
附帯工事とは、許可を受けた建設業に係る建設工事(主たる工事)に付随・附従して行われる、許可を受けていない業種の建設工事(従たる工事)のことです。
附帯工事自体が独立の使用目的で行われるものではなく、主たる工事の目的を果たすために発生する工事を言います。
附帯工事の3つの要件
附帯工事となるか否かの判断基準は、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインに、次のように書かれています。
○建設業許可事務ガイドライン11頁
「附帯工事の具体的な判断に当たっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討する。」
- ①主たる工事に付随して行われる一連・一体の工事である 5
- ②注文者の利便や工事の慣行等の観点から一連・一体の工事施工が必要又は相当である
- ③原則として主たる建設工事の工事価格を下回る 6(主たる工事に付随するものなので)
ことが附帯工事と認められる要件となります。
附帯工事となる2つのパターン
上記の判断基準を踏まえて、附帯工事と認められる2つのパターンを挙げます。
許可業種の工事を施工することで発生する工事
一つは主たる建設工事を施工する結果として必要となるパターンです。
例えば、エアコン設置工事(管工事・電気工事)と一緒に行われるエアコン設備の熱絶縁工事があります。工事の一番の目的は建物のエアコン設置ですが、エアコンの熱絶縁はエアコンの冷暖房機能が十分に発揮できるようにするために必要となる工事です。熱絶縁工事許可がなくても、管工事業や電気工事業の許可業者はこれを請け負うことができます。
他には屋根や壁の改修工事に伴う塗装工事などが挙げられます。一番の目的は屋根や壁面の改修ですが、塗装工事も屋根の保護等のために必要不可欠な附帯工事となります。屋根工事許可等があれば塗装工事許可がなくても受注できます。
許可業種の工事を施工するために発生する工事
もう一つは主たる建設工事を施工するために必要となるパターンです。
具体例として、配線改修の電気工事を施工するために必要となる内装仕上工事があります。工事の主たる目的は電気配線の改修ですが、それを行うために配線が通っている壁や床を剥がしたり直す場合は内装仕上工事が必要となり、電気工事許可だけで受注可能となります。
エアコンなど冷暖房設備の設置工事(管工事)をするために必要な工事として電気工事が附帯工事となるケースもありえます。
他に、壁の塗装工事を行うために必要となる足場組立工事(とび工事)や、建具工事に伴い必要となるコンクリート工事や左官工事も挙げられます。
いずれも工事の主たる目的を果たすための手段として、附帯工事が必要となるもので一括して請負うことで注文者の利便にも適います。
附帯工事と認められないパターン
逆に附帯工事と認められないのは、主たる工事に付随する一連・一体の工事として行う必要性や相当性がなく、独立した別々の工事と考えるべき場合です。
例えば、エアコン設置工事に伴いエアコンだけでなく、別の機械類の熱絶縁工事も併せて行う場合は電気工事・管工事と熱絶縁工事は別々の目的で行われる工事と考えられるでしょう。
配線改修のために壁や床を剥がすついでに、配線が通っていない壁床も一緒に剥がしてリフォームをするなら電気工事の附帯工事とは言えないと考えられます 7。
注文者の利便に適うとしても、工事の目的に鑑み主たる行為に付随する工事と言えないものは附帯工事とは認められないのです。
判断に迷う場合は、管轄の行政庁にご相談されることをおすすめします。
また、一式工事は各種の専門工事を組み合わせマネジメントして施工する工事ですから、一式工事が他の工事の附帯工事となることはありません。
附帯工事を施工する際の注意点
附帯工事に該当し受注ができるとしても、必ずしも自ら工事を行うことができるとは限りません。
附帯工事(軽微な建設工事を除く)を自ら施工する場合には現場に附帯工事の専門技術者を置かなければならないからです。
その専門技術者は、一般建設業許可の要件である専任技術者の要件を満たす者でなければなりません。例えば塗装工事が附帯工事となる場合では、1級建築施工管理技士や2級建築施工管理技士(仕上げ)等の資格者や10年以上の実務経験を積んだ者となります。
ただし、必ずしも他の技術者を用意する必要はなく、要件を満たすならば主たる工事の主任技術者や監理技術者が兼任することも可能です。
専門の技術者を配置できない場合や自ら施工しない場合は、附帯工事の建設業許可を受けた建設業者に下請を出す必要があります(軽微な建設工事を除く 8)。ただし、一括下請負の禁止 9に違反しないよう注意してください。
他に、建設業法以外の法律で施工できる者が制限されている工事もあります。
電気工事や消防設備工事は、電気工事士や消防設備士の免状交付者でなければ行ってはなりません 10。さらに、電気工事を施工できる業者は電気工事業の登録等を受けた業者だけです 11。
いずれも違反すると罰則がありますので、ご注意ください。
建設業法26条の2第2項
- 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設工事(第3条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事を除く。)を施工する場合においては、当該建設工事に関し第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する場合のほか、当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させなければならない。
参考文献
○建設業者のための建設業法(平成31年3月改訂版) – 国土交通省北陸地方整備局
【 脚 注 】
- 例えば屋根の修繕を頼むのに、屋根工事業者、とび工事業者、塗装業者、防水工事業者をそれぞれ選定して契約しなければならないとすれば注文者にとって非常に負担になります。建設業者にとっても、注文者が選んだバラバラの業者よりも顔見知りの業者と連携する方がスムーズに工事できることもあるでしょう。注文する側・受注する側いずれにとってもデメリットがあります。 ⮥
- 建設業法(以下、単に「法」と言います)4条。 ⮥
- 冒頭にもありますが、当該工事の請負金額が「軽微な建設工事」の範囲内であれば受注も施工も可能です。以下は全て「軽微な建設工事」に該当しない建設工事を念頭に解説を進めています。 ⮥
- 附帯工事に該当しなければ「下請に出すから」と言っても受注することはできません。自分で施工するか否かに関わらず工事請負契約を結ぶことができません。違反すれば、最大で3年以下の懲役及び300万円以下の罰金が科されます(法47条)。 ⮥
- したがって、注文者や工事現場が同じだからという理由だけでは附帯工事とは認められません。 ⮥
- 私見ですが、総合的な検討により判断されるので、工事価格が上回る工事でも附帯工事に該当し得ると考えます。例えば工事の技術的難度は低いが高価な原材料費を使用するために工事価格が高くなるケースは、附帯工事になり得ると考えられます。 ⮥
- 逆に、配線改修工事が内装仕上工事や大工工事の附帯工事と評価できるかもしれません。 ⮥
- 工事請負代金が税込500万円未満の工事を言います。 ⮥
- 法22条。 ⮥
- 電気工事士法3条、消防法17条の5などを参照。 ⮥
- 電気工事業法3条などを参照。建設業の電気工事業許可を受けただけでは施工できません。 ⮥