建設業許可のデメリット?軽微な工事を受注できない?
更新日:
軽微な建設工事 1は、建設業の許可を得ていない業者でも、契約を締結し、施工することができます。
ところが、建設業の許可を持っていることで「軽微な建設工事」を受注できないこともあります。
知事許可と大臣許可の違いにも関係する、建設業許可と営業所の関係について解説します。
目次
建設業許可と「営業所」の問題
契約を締結できるのは「営業所」だけ
建設業許可を受ける際には、建設工事の請負契約を行う「営業所」の届出をします。許可を受けた業種については、届出をした「営業所」以外で建設工事の受注をすることはできません 2。
そして、許可を受けた業種については、軽微な建設工事の受注のみを請け負う事務所であっても「営業所」に該当します。
逆に言えば、届出をした「営業所」以外の支店や事務所は、金額に関わらず、許可を受けた業種の工事を受注することができません。
許可を受けた業種については軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においては当該業種について営業することはできない。(国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」(平成13年4月3日国総建第97号)8頁)
業種についてはこちらの記事を参照。
具体例
本店だけを「営業所」として大工工事の許可を受けた建設業者は、本店で大工工事の請負契約の締結をすることができますが、他の支店では金額の大小に関わらず大工工事の受注をすることはできません。
許可を受ける前なら軽微な大工工事は本店・支店どこでも受けることができましたが、許可を受けると受注が制限されてしまうのです。
解決策
営業所の届出をする
最も分かりやすい対策は、契約受注業務をしたい支店や事務所を「営業所」として届け出ることです。知事許可であれば都道府県知事、大臣許可であれば国土交通大臣(地方整備局長)に届け出ます。
既に許可を持っている建設業者は「変更届」だけで、手数料なしで届け出ることができます。
ただし、「営業所」として届出するためには、専任技術者の設置 3などの要件を満たす必要があります。一定の資格や実務経験がある者でなければ専任技術者にはなれないので注意が必要です。
契約締結は営業所のみが行う
「営業所」以外の支店で禁止されるのは工事請負契約の営業・締結をすることです。分かりやすく言うと契約の決裁、契約書にハンコを押すことです。工事の施工が禁止されるわけではありません。したがって、契約の締結=契約書にハンコを押すことは「営業所」が行い、工事の施工だけ他の支店に任せるということは可能です。
許可業種以外の工事請負契約業務を行う
「営業所」以外の支店が行うことができないのは、許可を受けた業種についての工事の営業です。つまり、許可を受けていない業種の軽微な建設工事であれば、どの本店・支店・事務所でも請け負うことが可能です。
「営業所」の関連問題―大臣許可と知事許可
「営業所」が全て同じ都道府県内にある場合は知事許可、複数の都道府県にある場合は大臣許可が必要となります 4。
では、岡山本店では500万円以上の「大工工事」を受注するが、香川支店では500万円未満の軽微な「大工工事」だけを請ける予定である場合、知事許可と大臣許可どちらが必要でしょうか?
この場合、許可を受けようとする「大工工事」については、軽微な建設工事しか受注しない香川支店も「営業所」となります。したがって、岡山県と香川県の複数の県に「営業所」があるので、大臣許可が必要になります。
許可を受けた業種について軽微な建設工事のみ行う営業所についても法に規定する営業所に該当し、当該営業所が主たる営業所の所在する都道府県以外の区域内に設けられている場合は、国土交通大臣の許可として取り扱う。(国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」(平成13年4月3日国総建第97号)8頁)
まとめ
建設業の許可を受けた業種の建設工事については、金額に関わらず、届出をした「営業所」だけが契約の締結業務をすることができます。
「営業所」以外の支店では契約の締結はできませんが、工事を行うことは可能です。
「営業所」は許可の区分にも関わるので、許可申請前にしっかり見極めることが大切です。