電気工事業やるなら登録が必要!未登録なら罰則も!
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電気工事の事業を行う事業者は、電気工事事業者の登録、通知又は届出(まとめて「登録等」と言います)をしなければなりません。
建設業許可の「電気工事業許可」を取得している建設業者でも、電気工事をするのであれば登録等が必要です。
登録等が必要にも関わらず未登録で電気工事業を営んだ場合には、最高で1年以下の懲役&10万円以下の罰金が科されるおそれがあります 1。
知らず知らずのうちに違法な電気工事をして罰則を受けてしまわないように、電気工事業の登録について解説します。
目次
うちは電気工事業者の登録が必要?
どんな工事をするときに必要?
他人から依頼を受けて、自ら「電気工事」を施工することを、事業として(反復・継続して)行う者は登録が必要となります 2。
自ら施工する者だけが登録を要します。受注しても他人に施工させる場合、例えば「電気工事の施工(現場作業)は、全て下請業者に請け負わせる」のであれば、登録不要です 3。
「電気工事」とは、「一般用電気工作物」や「自家用電気工作物」の設置・変更の工事です 4。
電気工事士の資格がなければ作業できない工事だけでなく、電気工事士の資格がなくても可能な「軽微な工事」 5であっても、反復・継続して行う場合には登録が必要となります。
一般用電気工作物は家庭・商店の屋内配電設備や小出力の太陽電池設備などの電気設備、
自家用電気工作物は500kW未満の需要設備(キュービクルなど)のことです 6。
登録等が不要な工事もある?
例外的に、テレビや洗濯機などの家電製品の販売に付随して行う配線工事などの電気工事は、登録等をしていない事業者でも行うことができます 7。家電販売業者の中には登録なしで適法に工事されているところもあります。
家電の設置取付に伴う電器屋のサービスとして一般化しているうえ消費者にとっても便利であり、定型的・軽易な工事なので登録事業者でなくてもよいとしたのです 8。
ただし、登録は不要ですが、電気工事士の資格者が作業に当たることが必要です 9。
電気工事業登録の手続は?
電気工事業者となる方法としては、登録・通知・届出(みなし登録)があります。
「通知」は自家用電気工作物の工事のみを行う事業者が、「届出(みなし登録・通知)」は電気工事業の建設業許可を得ている事業者が行います。
「登録」が必要となるのは、建設業許可を取得しておらず一般電気工作物の工事を行う事業者です。
本記事では基本となる「登録」の要件について解説していきます 10。
電気工事業登録の必要な要件は?
①欠格事由に該当しないこと
まず、登録申請者が登録の欠格事由に該当していないことが要件です(法6条1項)。
欠格事由には、過去2年以内に電気工事に関する法律に違反して罰金以上の刑罰を受けた者や、同じく2年以内に電気工事業者の登録を取り消された者などがあります。
個人事業主であれば事業主本人、会社など法人であれば法人自身のほか役員全員が欠格事由に該当しないことが登録の条件です。それらのうち1人でも欠格事由があれば登録することはできません。
下記の主任電気工事士を除き、従業員の中に欠格事由に該当する人がいるとしても登録は可能です。
②営業所ごとに主任電気工事士がいること
電気工事業務を行う営業所ごとに「主任電気工事士」を配置しなければなりません(法19条)。
配置を要する営業所とは「電気工事の作業の管理を行う店舗」です。本店・営業所という名前の事業所であっても契約の締結や経営管理のみを行う店舗には主任電気工事士を置く必要はありません 11。
主任電気工事士になれるのは、上記の欠格事由に該当しない & 以下のいずれかの資格・経験を有する人です。
- ・第一種電気工事士
- ・第二種電気工事士の免状交付後、3年以上電気工事の実務経験のある第二種電気工事士
事業主本人・役員・従業員(パートタイマー含む)のいずれが主任電気工事士となっても構いませんが、営業所ごとに専任である必要があります 12。
複数の営業所や他の会社の主任電気工事士を掛け持ちすることはできませんし、会社の監査役や会計参与が兼任することも禁止されています 13。 14。
③法定の器具があること
営業所に以下の器具を備えておくことが要件となります(法24条、施行規則11条)。
- 1.絶縁抵抗計
- 2.接地抵抗計
- 3.回路計であって抵抗及び交流電圧を測定できる器具
- 4.低圧検電器
- 5.高圧検電器
- 6.継電器試験装置(※レンタルや他の営業所との共有でも可)
- 7.絶縁耐力試験装置(※レンタルや他の営業所との共有でも可)
- ※6,7の装置は必要な必要な時にレンタルできる措置を取っておけばよい 15
一般用電気工作物の電気工事のみの登録であれば1~3を、
自家用電気工作物の電気工事も申請するのであれば、7つ全てを備え付ける義務があります。
動作確認が取れているのであれば中古でも構いませんが、製造年や製造番号が分からないものはNGです 16。
誰に登録等の申請をすればよいのか?
登録等の申請先は、電気工事を行う営業所をどの都道府県に置くかによって3通りに分かれます。
- ・一つの都道府県の区域内にのみ置く場合
- → その都道府県の都道府県知事
- ・複数の都道府県に置くが、一つの産業保安監督部の区域内に置く場合
- → 産業保安監督部長(支部長)
- ・複数の都道府県に置き、かつ複数の産業保安監督部の区域にまたがる場合
- → 経済産業大臣
※産業保安監督部とは、関東地方や近畿地方、中四国地方など地方ごとに置かれた経済産業省の出先機関で、火薬・ガス・電力の保安などを担当する機関です。
例えば、岡山県と広島県に営業所を置く事業者は、どちらも中国四国産業保安監督部の担当区域なので、中国四国産業保安監督部長に登録申請を行います。
岡山県と東京都に営業所を置く場合は、関東東北産業保安監督部と中国四国産業保安監督部の複数の区域にまたがるので、経済産業大臣に申請をすることとなります。
詳しい担当地域については、下記のリンクをご参照ください。
電気工事業登録にかかる費用は?
電気工事業登録の申請手数料は、一つの都道府県のみに営業所を置く場合は2万2千円、複数の都道府県に営業所を置く場合は9万円です。
自家用電気工作物の電気工事のみを行う「通知」や、建設業許可業者が行う「届出」には、手数料はかかりません。
建設業許可と電気工事業登録の取得を考えている事業者は、建設業許可を取得してから電気工事業の登録(届出)をすれば、登録手数料が無料になるので順序を間違えないようにしましょう 17。
また、行政書士に登録手続を依頼する場合には行政書士報酬も発生します 18。
未登録で工事していたことが発覚したら…
直ちに申請先に相談して、登録等の手続を取りましょう。
最初に書いたとおり、未登録で電気工事業を営んだ場合には、最高で1年以下の懲役&10万円以下の罰金が科されるおそれがあります 19。
しかし、無資格者が施工してる場合や悪質な場合はともかく、要件を満たした上で登録だけ怠っていた事業者であれば、刑罰を科されることは稀でしょう。
ですが、法律違反状態であることに変わりはありませんから、速やかに適法な事業者となることをお勧めします。
当事務所でも岡山県を中心に電気工事業登録手続の代行を受け付けております。手続に時間を取られるよりも本業に集中したいという事業者の方のご相談をお待ちしております。
【 脚 注 】
- 電気工事業の業務の適正化に関する法律(以下、単に「法」といいます)36条1号。 ⮥
- 法第2条第2項、3条。経済産業省「電気工事業の業務の適正化に関する法律の逐条解説」(平成20年12月版)(以下「逐条解説」と言います)4頁には「他の者から依頼を受けた者が自らその電気工事の全部又は一部の施工を反復・継続して行う場合をいい、有償・無償の行為を問わない。」と定義されています。 ⮥
- 逐条解説29頁に「電気工事の請負契約は、本法の電気工事業者でなくともできる。」とあります。 ⮥
- 電気工事の定義は、電気工事士法2条3項の規定によります。 ⮥
- 「軽微な工事」は、電気工事士法2条3項但書、同施行令1条。登録も資格も不要である「軽微な作業」(電気工事士法3条、電気工事士法施行規則2条)とは異なります。 ⮥
- 法2条1項。逐条解説4頁以下。【一般電気工作物】【自家用電気工作物】の正確な定義は、電気事業法38条に規定されています。 ⮥
- 法2条1項但書で、電気工事業法の「電気工事」から除外されています。 ⮥
- 逐条解説3頁。 ⮥
- 「軽微な作業」(電気工事士法3条、電気工事士法施行規則2条)だけであれば、電気工事士の資格がない人でも可能です。 ⮥
- 「届出」も要件は同じですが、「通知」は主任電気工事士の設置が不要です。 ⮥
- 逐条解説6頁。 ⮥
- 逐条解説26頁。 ⮥
- 会社法333条2項1号、335条2項:【会計参与・監査役】と【株式会社の使用人】との兼任禁止。 ⮥
- ただし、私見ですが兼業が一切禁止されることには疑問の余地があります。ある県の担当者からは「業種を問わず兼業禁止」との回答を得ましたが、副業としての自宅でネットビジネスをしたり、週末にパートで働くことが一切禁止されるとは考えにくいです。 ⮥
- 主に設備完成時に使用され、他の器具と比べて使用頻度が少なく、かなり高価であることから常に備え付けなくてもよいとされています。逐条解説31頁。 ⮥
- 都道府県によっては、登録申請書に製造年・製造番号・製造業者名を記載する必要があるからです。 ⮥
- さらに、電気工事業の登録を受けた事業者が建設業(電気工事業)許可を取得すると、登録は無効になり(法34条6項)、改めて届出の手続を踏む必要があります。その手間を考えても建設業許可を先に取得するのが得策であると言えるでしょう。 ⮥
- 登録手続代行の報酬は行政書士によって差があります。これは行政書士の知識やサービスの差だけではなく、登録手続の必要書類が都道府県によって異なることも関係があるでしょう。書類のやり取りだけで完結する県もあれば、実地調査が必要な県もあるので、業務内容にも差が出てきます。 ⮥
- 電気工事業の業務の適正化に関する法律(以下、単に「法」といいます)36条1号。 ⮥