一般建設業許可の要件②専任技術者とは?
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①建築士、技能士などの一定の国家資格を有する者
②許可業種に関する学校の卒業後、一定期間以上の実務経験がある者
③許可業種に関し、10年以上の実務経験がある者
建設業許可を受けるためには、営業所ごとに専任の技術者がいることが必要です 1。
許可を受ける建設業種の専門知識を持った技術者が、営業所ごとに最低1人以上常時勤務していなければ許可をもらえません。
許可を取った後でも、専任技術者が1人もいなくなれば、許可は取消しになってしまいます 2。
一般建設業と特定建設業で要件は異なりますが、本記事では、一般建設業の専任技術者について、誰がなれるのか、なぜそのような要件があるのか、内容と理由を解説していきます。
目次
「専任技術者」要件の解説
専任技術者要件は、①技術者であること、②営業所ごとに専任であることの2つの要素からなります。
技術者
技術者として認められるのは、主に以下の3パターンの人です 3。
一定の国家資格を有する者
建築士試験に合格し登録を受けた者や、技術検定に合格した者など、一定の国家資格を持つ者が技術者になれます。
許可を受けようとする業種ごとに必要な資格が細かく分かれており、資格取得後の実務経験を要するものもあるので、取りたい業種と必要な資格を確認しておきましょう。
◆参考:国土交通省HP「営業所専任技術者となりうる国家資格者等一覧」
許可申請の際には、合格証明書や免状などで資格を証明します。証明の方法としては最も簡単で確実なので、建設業者の需要は高いです。
学歴+実務経験
高校や専門学校、大学の指定学科を卒業した後に、建設工事施工の実務経験を積んだ者が技術者になれます。
高校・中等教育学校の卒業者は5年以上、高専・短大・大学卒業者は3年以上の実務経験が必要です。
学歴があればどの業種でもいけるわけではなく、許可を取ろうとする業種に応じて必要な学科(指定学科)が細かく分かれています。
◆国土交通省HP「指定学科一覧」
許可申請の際には、学校の卒業証明書(卒業証書ではありません)と、実務経験証明書及び契約書等によって証明をします。
実務経験10年以上
国家資格や指定学科の卒業生でない者でも、許可を取ろうとする業種に関して10年以上の建設工事施工の実務経験があれば技術者になることができます。
許可申請の際には、10年分の実務経験証明書及び契約書等によって証明をします。
実務経験について
実務経験に含まれる工事経験は?
上記の実務経験は「建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験」です 4。
単なる工事現場の雑務や事務作業は含まれませんが、発注側で設計に携わった経験や、現場監督技術者として監督した期間、土工及びその見習いの経験も実務経験の期間に入ります。
計算方法
実務経験の期間は、建設工事に携わった実務経験期間を積み上げ合計して計算します。10年以上の実務経験であれば、10年連続の工事経験がなくても3年+4年+3年で合計10年以上あれば大丈夫です。
また、1年365日毎日工事に従事していなくても、例えば「四半期に1度工事施工経験があれば経験年数1年として計上する」など、独自の計算ルールがあります。都道府県ごとによって異なりますので、問い合わせや手引きで確認しましょう。
なお、原則として同一期間を複数の業種の実務期間として計上することはできません。
例えば、平成15年1月~平成25年12月まで土木工事と大工工事の実務経験があるとしても、10年間の実務経験として計上できるのは土木工事か大工工事のどちらかだけです。両方の工事の専任技術者となるためには、合計20年間の実務経験がなければなりません。
◆例外として、実務経験期間の緩和措置がある業種もあります。
証明方法
上述のように、実務経験期間は、実務経験証明書と、該当年数分の契約書等の確認資料によって証明します。
「10年分の契約書を揃えるのは大変だから…」と申請をあきらめる方も聞きますが、丸々10年分の資料がなくても実務経験を証明できることがあります。お困りの際はご相談ください。
営業所ごとに専任
1つの営業所に常勤して、専らその営業所の技術者としての職務に従事することが必要です 5。
他の営業所を専任する者や、勤務地と自宅が遠くて通勤していると考えられない者、別に個人事業をしていたり他会社の常勤役員である場合などは、営業所の専任と認められない可能性があります。
アルバイトやパートタイマー、派遣社員も専任とは認められませんが、出向社員は勤務状況や給与支払の状況、その者に対する人事権の状況等から「専任」であると認められることもあります。
また、同じ営業所に勤務するのであれば「経営業務の管理責任者」が専任技術者を兼任することもできます。
なぜ専任技術者が必要なのか?
専任技術者が要求される理由
建設業許可を取るのに専任技術者が必要で、専任技術者がいなくなれば許可を取り消されてしまいます。なぜ営業所の専任技術者が必要なのでしょうか?
それは「建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するため 6」には、建設工事の企画から請負契約締結までの過程(営業段階)において技術的な調整を行う必要があるからです 7。
適正な建設工事の施工を行うためには、工事現場に技術者を設置するだけではなく、契約に至る営業段階でも適正性を確保しなければなりません。
そして建設業に関する営業の中心は各営業所にあるので、営業に関する技術的な助言・監督・調整を行う技術者が営業所ごとに常に勤務していることを要件としているのです。
補足・今後の法改正
現場と営業所が近接している等の一定の要件を満たせば、営業所を出て工事現場の技術者を兼務することもできますが、特に中小企業では営業所の専任技術者が現場技術者を兼任している(技術者は全員現場に出払っている)ケースがあります。
中小零細企業においては、営業所における仕事よりも現場の仕事が多いこともあり、せっかくの技術者を営業所に閉じ込めておくのは宝の持ち腐れになるでしょう。
ビデオ通話ツールの普及もあり、営業所専任技術者と現場技術者との兼任要件の緩和については改正の検討項目にも挙がっています。今後の動向に注目です。
【 脚 注 】
- 建設業法(以下「法」と省略)7条2号。 ⮥
- 法29条1項1号。 ⮥
- この他に、法令上は、国土交通大臣が国家資格者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認める者も技術者になることができますが、認定事例はほぼありません(法7条2号ハ、建設業法施行規則7条の3第3号)。 ⮥
- 「建設業許可事務ガイドラインについて」25頁参照。 ⮥
- 「建設業許可事務ガイドラインについて」25頁参照。 ⮥
- 法1条の目的を参照。 ⮥
- 参考:「第2回 法制度・許可ワーキンググループ資料 資料3 建設業許可制度」など ⮥