定款を紛失したとき取るべき4つの手続とは?
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銀行の融資を受ける際や、事業の許認可を受ける際に定款の提出を求められることがあります。
ところが「創業が古いので定款がどこにあるか分からない」「災害で定款を紛失してしまった」など、定款が手元にない場合があります。
定款はいわば会社の憲法。設立時には必ず作成しており、株式会社・特例有限会社は定款を会社に備え置き、株主や債権者から請求があれば閲覧させる義務があります 1から、定款がないというのは信用に関わる問題です。
定款が行方不明になったときは、どうすればいいのでしょうか?対処方法を解説していきます。
目次
定款の作成者に確認する
会社の設立を司法書士や行政書士などの専門家に依頼していた場合は、定款の控えを保管している可能性があります。
誰に依頼したか分かるのであれば、まずは確認してみるといいでしょう。
ただし、いつまでも保管する義務はありません。時間が経って廃棄されている場合は他の方法を採ります。
法務局で閲覧する
法務局で、会社の設立登記や変更登記をする際に提出した定款を閲覧することができます 2。
誰でも閲覧できるわけではなく、利害関係人(役員、株主等、債権者)が相当の理由がある場合に限って閲覧することができます 3。会社の役員が紛失した自社の定款を確認する目的であれば閲覧が認められるでしょう。
ただし、法務局では、登記申請受付の日から5年間しか保存されない 4ので、期間を経過して破棄されていた場合は閲覧することができません。他の方法を採りましょう。
公証役場で謄本をもらうー株式・有限会社のみ
定款を認証した公証役場で、定款の謄本(コピー)をもらうことができます 5。
株式会社と(特例)有限会社 6は、会社を設立する時に公証人から定款の認証を受ける必要があります。公証役場でその際の定款を保存しているので、その謄本(コピー)を請求することができます。
これも誰でも請求できるわけではなく、利害関係人(役員、株主等、債権者)が請求できます。
公証役場での定款の保存期間は20年 7なので、それを過ぎて廃棄されていれば謄本をもらうことはできません。
また、公証役場の統廃合などで、どの公証役場に請求すればいいか分からない場合も難しいかもしれません。
定款を再作成する
法務局や公証役場に定款がない場合には、定款を再作成して定款変更の手続を採ります。
会社は、法定の手続を踏めば、自由に定款を変更できます 8。きちんと定款変更の手続を行えば偽造にはなりません。
最も簡単な方法は、会社の最新の登記簿を取り寄せて、その記載事項と矛盾しないように(登記簿の記載と同じ文言で)定款のひな形を改変し、株主総会などで可決するだけです 9。
定款を再作成しても、印紙を貼ったり公証人の認証を受けたりする必要はないので、会社内の手続だけで完結し 10、早ければ1日で完了します。
会社ごとに定款変更に必要な手続は以下の通りです 11。
&出席株主の議決権の3分の2以上の賛成
&当該株主の議決権の4分3以上の賛成
最後に
はじめに書いた通り、定款はいわば会社の憲法、根本規則です。
「補助金や融資を受けるため」「許認可を得るため」「取引先から見せるよう言われたから」定款を用意するだけではなく、より良い会社・あるべき会社の形を作り、経営・運営を行っていくための武器として定款を活用していくこともできます 12。
「うちの会社の定款はどんな内容だったかな……?」と思った経営者の方は、一度定款を見直ししてみることをおすすめします。
定款見直しのサポートは全国対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
【 脚 注 】
- 会社法31条。有限会社法28条1項も参照。なお、合名・合資・合同会社は定款を備え置く義務はありません。 ⮥
- 商業登記法11条の2、商業登記規則18条、21条。 ⮥
- 会社の登記簿は、手数料さえ納めれば誰でも自由に閲覧できます。 ⮥
- 商業登記規則34条4項4号。なお、電子証明書に係る申請書類及び電磁的記録であれば13年間は保存されます(同項10号)。 ⮥
- 公証人法62条の5準用→同法60条の4準用→同法51条。 ⮥
- 株式会社は会社法30条1項。有限会社は有限会社法5条2項準用→商法167条(現在削除)。なお、現在、有限会社を新規に設立することはできません。 ⮥
- 公証人法施行規則27条1項1号。 ⮥
- 株式会社・特例有限会社は会社法466条、持分会社は同法637条。 ⮥
- 定款の一部が登記簿にもそのまま記載されています。 ⮥
- 登記簿の記載と異なる内容へと変更することも可能ですが、その場合には定款変更から2週間以内に変更の登記をする必要があります(会社法915条1項)。 ⮥
- 「定款変更の決議要件」を定款で加重することも可能なので(会社法309条2項など)、紛失前の定款で要件の加重があったか否かが問題になる可能性はゼロではありません(会社法831条1項1号:決議取消事由)。念のため、過去の総会議事録が残っていれば可決要件を確認しておいてもいいでしょう。 ⮥
- 同じことは就業規則についても言えます。 ⮥