知事許可と大臣許可とは?どちらを取ればいい?
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建設業の許可には、都道府県知事が出す許可(知事許可)と国土交通大臣が出す許可(大臣許可)があります。
建設業許可を取得するとき、どちらを取得すればいいのでしょうか?その違いと注意点について解説します。
営業所が複数の都道府県にあるかどうか
知事許可と大臣許可のどちらを取るべきかは、営業所が複数の都道府県にあるかどうかだけで決まります 1。
「知事許可」は建設業を営む営業所が同一都道府県内にのみある場合に必要な許可であり
「大臣許可」は営業所が複数の都道府県にある場合に必要な許可です。
例えば、建設業の営業所が岡山県だけにある場合には岡山県知事許可が必要となり、営業所が岡山県と東京都にある場合には大臣許可が必要となります。仮に「岡山本社」「倉敷営業所」など複数の営業所があっても、全て同じ岡山県内であれば、岡山県知事許可となります。
営業所の所在地だけで決まるので、優劣や上下関係、許可取得の難易度に違いはありません 2。
以上のように、許可の区分基準は営業所の場所だけなので、建設工事を施工する場所を制限するものではありません。知事許可でも大臣許可でも、許可をもらった業種について、日本全国どこの建設工事であっても行うことが可能です 3。
大臣許可と知事許可の別は、営業所の所在地で区分されるものであり、営業し得る区域または建設工事を施工し得る区域に制限はありません。(→例えば、東京都知事の業者であっても建設工事の施工は全国どこでも行うことが可能です。)(国土交通省「建設業の許可とは」)
「営業所」とは?
では、知事許可・大臣許可を分ける基準となる「営業所」とは何でしょうか?
「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所のことです 4。
したがって、①建設工事の請負契約の見積り、入札、契約締結などの契約業務を行う事務所や、②他の営業所に対して決裁その他請負契約に関する指導監督を行っているところが「営業所」です。本社・本店・営業所などの名前や登記の有無とは無関係に、業務の実態で判断します 5。
ですから、代表取締役の自宅を会社の本店として登記していても、実際の業務は別の事務所で行っているならばその事務所が「営業所」となります 6。他にも、現場作業員の作業事務所や詰所であったり、産業廃棄物処理、原材料や機械の売買契約だけを行い建設請負契約の締結を行わない事務所は「営業所」には該当しません。
例えば、岡山県に営業を行う本店があり、香川県に工事を施工するための現場事務所、兵庫県に設計専門の事務所がある会社の場合、「営業所」は岡山にある本店のみなので岡山県知事許可が必要になります。
以上をふまえて、「営業所」が同じ都道府県内にのみあれば知事許可、そうでなければ大臣許可を取るようにします。
本社、本店、支店等名称のいかんを問わず、建設業を営むための常設の事務所をいい、看板の表示等、外観上営業所としての形態を備えていることはもちろんのこと、見積り・契約等の実態的な業務を常時行っている場所を指します。従って、現場作業所や連絡事務所、通常は居住の用に供しているものなどは、営業所とはみなされません。(岡山県土木部監理課「建設業許可の手引(平成28年11月1日改訂)」3頁)
「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。
また「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいい、契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かを問わない。(国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」(平成13年4月3日国総建第97号)8頁)
許可申請手続について
知事許可も大臣許可も、申請手続は主たる営業所を担当している都道府県を経由して行います。大臣許可だからと言って直接国土交通省まで持って行く必要はありません 7。
ただし、申請書類以外の確認資料の提出先(都道府県か地方整備局か)、申請手数料の金額(大臣許可の方が高い)、手数料の納付方法(収入証紙か登録免許税及び収入印紙か)、営業所調査の方法、申請から許可までの期間などいくつか手続に違いはあります。都道府県ごとで異なることもありますので、申請先の手引きなどを確認して行う必要があります。
【 脚 注 】
- 建設業法3条1項柱書。 ⮥
- 「大臣許可を取得している会社の方が偉い」とか「知事許可の方が許可をもらうのが簡単」ということはありません。ただし手続の方法や申請手数料(大臣許可の方が高い)は異なります。 ⮥
- 許可を受けていない業種についても、許可が不要な「軽微な建設工事」であれば当然可能です。 ⮥
- 建設業法3条1項柱書、建設業法施行令1条。 ⮥
- 建設業法3条を見ると「本店」及び「支店」は常に「営業所」に該当するように読めます。この「本店」「支店」は営業所の要件(同7条2号ほか)など建設業法の規定に鑑みると、会社法における「本店」「支店」とは異なり、①②で示したような実質的に契約に関与する事務所のことだと考えられます。本文後述のガイドラインも参照。 ⮥
- 実際に登記されている「本店」と業務を行う「本社」が異なる中小企業はしばしば目にします。 ⮥
- 大臣許可も実際には本店の所在地を所管する地方整備局長等が許可を行います。 ⮥