LLPって何?メリットと注意点
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ベンチャー、研究開発、町おこし……無限の可能性を秘めたLLP!そのメリットと注意点とは?
LLPとは
LLPとは有限責任事業組合(LimitedLiabilityPartnership)のこと。
複数の人や会社が一つの団体として事業を行う、新しい形の事業形態です。2005年に有限責任事業組合契約に関する法律(以下、LLP法)が施行されて利用できるようになりました。
業種や企業の事業規模の垣根を越えた連携を促したり、若者やクリエイターの挑戦の支援したり、地域活性化や社会貢献活動を後押しするなど、様々な分野で活躍が期待される制度です。
会社や個人事業ではなく、LLPを選択するメリットは大きく分けて4つあります。
1.有限責任
2.柔軟な経営
3.パススルー課税
4.簡易な設立手続
順番に説明をしていきます。
メリット1有限責任
LLPにお金を出資すれば、それ以上はお金を負担する必要がない、ということが有限責任です。
LLPを作る際に、団体の活動資金として出資金を払い込みますが、LLPが借金を抱えたとしても、組合員個人は払い込んだ出資金の他にお金を取られることはありません。
例えば、LLPに出資金として10万円を払ったところ、事業に失敗して1年後には100万円の借金を抱え、解散することになったとしても、10万円が返ってこないだけで、90万円追加で負担する必要はありません。
個人事業であれば、100万円借金すれば100万円、1000万なら1000万円返す必要があります(無限責任)から、大きな違いです。
「自分で事業を興したい!」と考えたとき、ネックになるのが失敗のリスク。
LLPは、必ずしも事業の失敗の可能性を減らすわけではありませんが、仮に失敗したとしても、再挑戦の可能性を切り開くことができます。
メリット2 柔軟な経営ができる
組合員の出資割合や利益・損益の分配、事業方針の決定は、組合員が自由に決めることができます。
LLP事業で利益が出た場合に、どの組合員にどれだけ利益を分配するかは、出資額と無関係に自由に決めることができます。株式会社であれば、持ち株数(≒出資金の多寡)に応じて出資が配分されます。クリエイターなどノウハウや専門技術を提供する人への分配を多くするなど、インセンティブを高める工夫も期待できますから、ソフト開発やアニメ制作事業などでの活用が望めます。
事業方針や経営のことなども出資者の話し合い(原則として全員一致)で自由に決めることができます。例えば株式会社であれば、取締役会や株主総会の設置が強制されたり、経営方針の決定に株主の顔色を伺う必要があったりという制約があります。
それに対し、出資者全員が、主体的に、対等の立場で発言し、即座に実行に移すことができるのもLLPのメリットです。
企業や大学が共同して行う研究開発など、短期的な利害関係に捉われずに進めたい事業と相性がいいと考えられます。
メリット3 パススルー課税
LLP事業で発生した損益は、LLP自体ではなく、組合員=出資者において課税されます(パススルー課税)。
LLP導入の理由の一つと言われるのが、パススルー課税です。
例えば、株式会社であれば、事業の儲けに対して会社に課税(法人税)され、利益分配を受けた株主個人にも課税(所得税)されます。会社と株主で二重に課税されるのです。
それに対して、パススルー課税が適用される場合は、団体への課税はなく、構成員個人への所得税の課税(構成員が法人の場合は法人税)1回のみとなります。
またLLP事業が赤字になった場合は、構成員の他の所得からLLPの赤字分を引いて税金の計算をする損益通算を行い、税金を安くできることがあります。
メリット4 安い費用、短時間で簡単に設立できる
資本金1円でも作れる株式会社ですが、その設立は定款を作成→検査役の調査→公証人の認証→出資金払込み→登記……など、最低でも20万円以上の費用(登録免許税、定款認証代など)が掛かり、時間も1週間から長ければ3週間ほど掛かることもあります。
それに対して、LLP設立は、契約書を作成→出資金払込み→登記と、必要な費用は設立登記の登録免許税6万円で、登記の審査だけなら1週間程度で終わります。
事業開始までに必要な費用が安く、短時間で済むのもLLPの大きな特徴です。
※事業開始のための資金や、契約内容の決定に掛かる期間などは計算に含まれていません。それらはケースバイケースで一律に括ることができないからです。
デメリットと注意点
様々なメリットがあるLLPですが、デメリットがあるとすれば知名度の低さ。制度発足から10年以上経ちますが、株式会社や協同組合(生協など)と比較すると、まだまだ名前を知らない方も多いです。登記によって公示されている団体であるということや実績を以て信用性をアピールしましょう。
また、LLPは会社のように永続性を持った団体を想定しておらず、あくまで特定の事業目的を果たすための個人(法人)の集合体という扱いです。ですから、団体として建設業許可等を取得することはできず、それぞれの構成員が許可を得る必要があります。
個人事業と比較すると、登記するのを忘れていると100万円以下の過料が科されたり、財務諸表や契約書類を10年間保管する義務(個人の青色申告者は7年)があったり、と制約もあります。
LLPの赤字の損益通算は、出資金の限度など一定の範囲内でしか適用されません。節税目的で利用しようと考える方も注意です。
LLPという選択肢
多くのメリットを持つLLPですが、万能の団体ではありません。会社や組合、個人事業と併せて、事業を興すときの選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか?
LLPの設立・運営のご相談を承っております。検討したい方は、お気軽にお問合せください。